2016年1月19日火曜日

美少女

また火曜日が来た。



わいわい広場の日だ。



今回の滞在では父が問題を起こすでもなく、補聴器の混乱もなく、穏やかな日々が続いた。



父が唯一楽しみにしている、わいわい広場に車椅子を押して行った。



2年前の父は車椅子どころか、スタスタと早足で歩いて行っていたのだ。



今は気力も随分減退しているし、以前のように自分が一番、というような態度も取らない。



父がホームのイチローだったのはほんの2年半前なのに。

2年半前とは大違い


以前は45分のイベントの間にも、父は『おーい、ちょっと来てくれぇ。』とまるで殿様のように私を偉そうな態度で呼びつけていた。


なのに、今は大人しくしている。



呼びつけられていた時は憎たらしいなあ、と感じていたが、今はそんな父を見てかわいそうになる。



父に対してはいつもいつも同じ感情を持つ。



うるさいなあ、憎たらしいなあ、という気持ちと、かわいそうに、という気持ちと。

イベントの前にこのボール30個分の空気を入れてあげた
結構重労働


父を部屋に連れて帰ったあと30分ほど話して、11時40分の電車で京都駅に出ることにした。



とにかく、最近は出かけたらただでは帰りませんよ、という気持ちがいつもある。



だから今日は、新大阪までご飯を食べに行くことにした。



新大阪には乗り換えで行ったことがあるだけで、駅構内は全くわからない。



どうも京都と違って、新大阪は大都会のようだ。



新幹線のホームだけでもいくつもある。

京都は上りと下りのホームが4つあるだけ


そして駅構内のレストランもものすごい数だ。



やっと比較的すいているお店を発見。



少し待っただけで席に案内されたのは、蕎麦弦というお店。



すいているのにめちゃくちゃうまい!



おいしい、というよりもうまい!



そして900円というすばらしいコスパ。



さすが大阪。

たこ焼きとお好み焼きを食べたかったが、
さすがに一人でお店に入る勇気なし



このランチを食べながら、わいわい広場のことを思い出した。



今日は30人ぐらい参加していて大盛況だった。



半分は入居者、あとの半分はデイサービスに来ている人たちだと思う。



デイの人たちは70代ぐらいだろうか。



中に一人素敵な女性がいた。



小柄で洋服もちょっとおしゃれで上品な感じ。



ホームでも高齢者の男女に恋が生まれるらしいが、モテるのはああいう女性なんだろうなあと思う。



自分のつらい恋を思い出した。



高2の時Yぶき君という一年上の男の子がいた。



このYぶき君は物静かな美青年だったが、女の子たちは皆この人に憧れていた。



Yぶき君が教室から出て来ると、廊下から彼を見ていた女の子たちがサーッとYぶき君のためにわきに寄って道を作る。



まるでモーゼが手を挙げて海が割れたようだ。

京都に帰ってきた時は雪が降っていた



太った私なんかYぶき君の目に留まるはずもない、と思いながらも一縷の望みは持ってしまう。



Yぶき君がいるから、毎朝学校に行くのが楽しみだった。



だが、その楽しみは秋の文化祭の日に、終わりを迎えた。



写真部のYぶき君が発表した写真を見て、私は全てを理解した。



写真は同級生Sちゃんのポートレートだった。



そしてその写真の下には題名があった。



その題名は『美少女』。



Sちゃんは身長が145センチぐらいで、私より20センチは低いのだ。



つまり、165センチ以上ある私にはチャンスは皆無ということだ。



Yぶき君は、145センチの小さな美少女Sちゃんが好きだったのだ。




そうなのだ。



男性が好きなのは、Sちゃんのような小柄なかわいい女性だ。



いずれ夫が死んだあと一人でホームに入居した私は、またがっかりするかもしれない。



第二のYぶき君、いやYぶき老人は小柄な美老女にしか興味ないのだ。



そうに決まっている。

しかしそこまで考えますかね、普通