2013年7月5日金曜日

間違いだらけの一日

京都はもう腹が立つほどベタベタの暑さ。この湿気で息苦しくなってしまう。そんな暑さの中、父のホームに歩いて行ったのは大きな間違いだった。9時過ぎだから大丈夫だろうと思ったのが甘かった。途中で心臓マヒを起こしたらどうしよう、と思うほど苦しい。ホームに着いた時は、玄関で全部洋服を脱ぎ捨ててしまいたいほど、身体にまとわりついていた。

父が厚着をしているのを着替えさせて、園長さんやスタッフと1時間ほど話してまた祇園に向かう。祇園など以前は行った事がなかったが、この6年くらい祇園で食べるということは余り珍しくなくなった。今日はいかにも京都らしいお店に、長男と長男の友人を連れて行った。これが今日2番目の間違いだった。



祇園Tは板前さんがさっぱりとした店内で料理をしている。松花堂弁当を3人とも注文する。ところが余りおいしくない。ここには何度も来たが今日ほどおいしくないと感じたことはなかった。これで3人で7600円?夕べの4人で9600円の夕食とは味において雲泥の差だ。

食べたあとはまた長男と父のホームに引き返し、父に別れを告げさせる。祇園四条から京阪電車に乗り、東福寺でJRに乗り換えるのだが、東福寺には電車が20分来なかった。田舎だから本数が少ないのだ。うだるような暑さの中で待つのは疲れる。

ホームに着くと父は険しい顔をしている。補聴器の電池のことで混乱しているのだ。とにかく父にとって補聴器はライフライン。電池がなくなってしまうことはパニックに陥る原因なのだ。父も、だから電池をしっかり容器に入れて整理しているが、最近はどこに整理したのか思い出せない。



どうにかこうにか長男に別れを告げさせて、今度は2時から始まる歌の広場に連れて行く。1階の広場には50人以上集まっている。熱気でものすごく暑い。でも、父にリズムをつけてあげることは大事なので、横で楽譜を一緒に見たりしながら助ける。


歌の先生が父の歌好きを知っていて、マイクを持って来てくれる。父は大きな声でうたうのだが、それを先生は「すばらしい声ですねえ。」とほめる。いけない。そんなことを言ってはいけないのだ。父はほめられて自信が少しつく、というのではなく、自分が一番と思い始めるのだから。


看護師さんもそこに来て、艶のあるお声ですね、と父をほめる。皆総出で父をちやほやするのだ。父はもう雲の上にいるような気分だろう。ドーパミンが充分出ただろうから、会が終わったあと3時半頃帰ることにした。


今日は酷暑の中疲れたので帰り道はタクシーを使う。これが今日3番目の間違い。タクシーに乗ってすぐシートベルトを締めたら、運転手が振り返って「何しとるんや。高速乗るんちゃうで。」と不愉快そうに言う。「は?」と聞き返すと「なんでシートベルト締めるんや。高速に乗るんでもないのに。そんな必要あらへんで。」とふてぶてしい。

こういう時言い返すと泥沼だ。「はいはい、そうですか。」とふてぶてしい声でお返しする。運転手は負けていない。「この年までタクシー運転してたけど、シートベルトを締める人なんか初めてやで。」とまた繰り返す。かなりムカついた。今朝は9時過ぎから暑い所を歩いてホームに行き、園長さんやスタッフと話して、そのあと祇園まで電車に乗って日差しの強い南座の前で30分長男を待ち、不機嫌そうな長男と友人をランチに連れて行き、そして電車を乗り換えてホームに行って、父の部屋の整理を手伝って、歌の会に行って、と句点を打つ間もないぐらい忙しかったのだ。最後のタクシーの中ぐらい気分良く乗らせんかい!もう一度「あ〜、はいはい、そうですか。」と極めて不機嫌です、というトーンの声で返したらやっとタクシー運転手も黙る。

ふむ、これが美しく若い女だったらこの運転手もニコヤカに「シートベルトなんかいらへんでぇ」とデレデレするのかもしれないが。これから高齢者になると、噴飯ものの扱いを受けることは多くなるのだろう。まあこれについては、またゆっくりと書くことにしよう。

夕方は姉が仕事のあとホームに寄った。父は穏やかだったらしい。それでも夜また何でスイッチが入るかわからないので、いつ電話がかかってくるかと気が気ではない。携帯電話は必ずポケットに入れておく。父のスイッチが入らないようになる日は来るのだろうか。

やっぱり今晩もまたこれ