2013年5月5日日曜日

跨線橋

日本で使っている携帯電話に修理が必要になったので、明日帰国だけどぎりぎり間に合うかなと思いドコモの営業所に行ってみた。ここはいつも混雑していて45分から1時間は待たされる。結局姉が最近買った携帯を私がもらうことにして、代わりに姉が新しいのを買う。


携帯電話が変わっただけでなく、契約金の関係で新規登録にするために、私の方の電話番号を新しく変更することにした。するとまあ手続きの煩雑なこと。新規契約だと無料です、と言われたにもかかわらず、解約料だの新しい番号に付随する有料サイト料金だの、契約金がじりじりと上がる。

結局2万円ほどかかることがわかった。有料サイトは家に帰ってすぐ解約することにする。今月分の3000円は仕方ないが、来月からの12の有料サイトの月額3000円はもったいない。ところが、この一つ一つの解約に時間がかかりパケット数もどんどん上がっていく。帰国前日で忙しいのに、これで数時間を使ってしまった。

夕方父の所に行くと、父はベットの中に入っていた。寒い寒いと言っている。エアコンのスイッチの切り方がわからないらしい。

スイッチはグレーの小さなボタンで、どうもこのボタンが見つけにくいようだ。赤いテープを上から貼ることにした。父と使い方を何度か練習してみる。これなら大丈夫と父は言うが、明日は覚えていないかもしれない。


スタッフに熱いお茶をもらって来て、父をベットから出て窓のそばに置いてある椅子に座って飲むように言う。

2階の部屋では外を全く見なかった父が、この部屋はなぜか外を見るのが楽しいと言う。電車のホームが見えにくくなったにもかかわらず、以前よりずっとおもしろい風景らしい。




確かに開放感がある。大通りも見えるようになって、動きがもっとあるのかもしれない。電車が着くと歩行者が橋を渡るのも見えるようになった。父は『跨線橋が見える』と言う。コセンキョウ?聞いたことのない言葉だ。線路を跨がる橋という意味らしい。

オレンジ色に見えるのが跨線橋

この駅から25年前父と一緒に電車に乗った。京都駅から新幹線に乗り換える。岡山駅まで行き、瀬戸大橋を見に行ったのだ。「電車の中でつり革を持った時袖口が少し下がって、あんたがアメリカで買って持って来てくれた腕時計が見えるのが嬉しかった。」と言う。そんなことは全く覚えてなかった。私が父に時計を買ってあげたことがあったのか。

長男が1歳の時だったので、父は長男を抱いて自動販売機に連れて行き、飲み物を一緒に買ったと言う。「本当に楽しかった。」と駅を見ながらつぶやく父を見てかわいそうで胸が詰まった。そんなことが楽しい旅の思い出として記憶に残るほど、他にどこにも行ったことがなかったのか。戦争で台湾に行き、その後も決して豊かな暮らしをしたわけではない。楽しい旅行の思い出は殆どないのだろう。


この時、来月もう一度帰って来て、たくさん思い出話をしてあげよう、と決めた。